先週の話になりますが、6日(水)・7日(木)の2日間、5年生がフローティングスクールに出かけました。航海を共にしたのは、布引小学校と八日市養護学校、そして八日市北小の3校です。お天気は申し分なかったのですが、2日目は予想以上の強風と冷え込みで、かなり揺れる船旅と初冬のびわ湖の厳しさを、身をもって体験することができました。
そもそもフローティングスクールは、約40年前の昭和58年に始まりました。初めて乗ったのは今51歳の人です。つまり51歳以下の人で小学5年生を滋賀で過ごした人はほぼみんな、この「うみのこ」に乗船し、フローティングスクールを経験していることになります。今日までに「うみのこ」に乗船した5年生は、約63万人。数だけで言えば、およそ滋賀県の人口の半分弱になります。
フローティングスクール=「琵琶湖に浮かぶ船の学校」・・・こんな学校は全国で唯一です。(ちなみに近江八幡市の沖島は、「湖」に浮かぶ唯一の「有人島」で、これまた全国で唯一です。)日本一の大きさを誇る琵琶湖自身も、その湖上で40年間脈々と続いてきたフローティングスクールも、滋賀県の誇りだと思っています。
子どもたちにとってフローティングスクールは、とても「特別な校外学習」です。そう思えるのは、一つは、大きな学習船「うみのこ」に乗れること、2つ目に「宿泊」を伴うこと、3つ目に他の学校の友だちと同じ班で共に行動することなどでしょう。ドキドキワクワク・・・楽しみでもあり、ドキドキハラハラ・・・大変不安でもあり・・・とにかくフローティングスクールは他の行事とは一線を画す「特別なもの」なのです。
「うみのこ」の生活は、1日目は、琵琶湖大橋港からの出航見学に始まり、開校式→避難訓練→船内見学・昼食→寄港地活動「長浜タウンウォークラリー」→夕食・シャワー→夕べの集い(交流活動)→就寝。
2日目は、起床→荷物整理→朝食→びわ湖学習→昼食→船内掃除→閉校式→下船(琵琶湖大橋港)と、割とタイトな分刻みのスケジュールで進んでいきます。
今回の子どもたちの乗船人数は、八日市北小62人、布引小31人、八日市養護16人、合計109人でした。圧倒的与党の立場にある本校の子どもたちは、他の2校の子どもたちよりも気楽な気持ちでいられたことだと思いますが、今日まで全く知らなかった他校の子どもたちと、いきなり同じ船の中で過ごし、同じグループで一緒に活動しながら積極的に仲良くなるというのは、そう簡単なことではなかったようです。「うみのこ」ですることすべてが初めてのことで、活動自体にも緊張しますし、ましてや「知らない仲間」と一緒にすることはもっと緊張します。最初の昼食は、別に楽しくしゃべりながら食べればいいのに、なぜか「黙食」を指示されたかのようになっていました。長浜でのウォークラリーでも、なんとなく一緒にぞろぞろ歩いている感じはありますが、学校の垣根を越えて会話が弾んだかと言えばそんな感じでもなく・・・。
そんな子どもたちの「硬さ」が取れてきたのは、ウォークラリーから「うみのこ」に帰ってきた時に、できた「すき間時間」で班ごとに「びわこかるた」を楽しんだ時だったような気がします。班で円になり、「かるた」というとてもシンプルな遊びをする・・・これが意外に盛り上がり、子どもたち同士の距離を一気に縮めることになりました。夜の集いでは、「ボッチャ」というパラスポーツを班対抗でやったのですが、八日市養護学校の友だちも一緒になって、とてもとても盛り上がりました。
男子は全体で40人ほどですが、一番大きな部屋で「40人全員」が寝ました。おまけに男の先生たち(本校で言えば、T先生、H先生、M先生)も一緒の部屋で寝てくれました。おそらくこんな大勢で一緒に寝ることは人生において最初で最後になるでしょう。本当にいい思い出になると思います。引率の先生たちはみんな、部屋ごとに分かれて、全員の子どもたちが眠るのを見届けてから、就寝しました。特に女性の先生方には十分に休んでもらえず申し訳なかったです。
2日目は、「びわ湖」について学び、考える「びわ湖学習」がメインの活動でした。びわ湖の水や水道水の透明度(透視度)調査、魚の観察、プランクトン顕鏡、湖底の観察、プラスチックごみ調査、びわ湖の漁業と食文化の6つのテーマ学習にローテーション方式で取り組みました。びわ湖の現状や課題について、新たな発見や気づきのある価値ある学習になりました。
私(校長)は今まで10回以上フローティングスクールに同行していますが、いつもいつも思うことがあります。フローティングの最大の魅力は、普段の生活では絶対できない「びわ湖側からふるさと滋賀を眺められる」という貴重な体験ではないかと・・・。沖の白石や多景島を間近に展望できることや、びわ湖から見る鈴鹿や比良の山々の連なり、そして伊吹山。甲板の凛とした空気の中で眺める朝焼け・・・。びわ湖越しに見るそれらの風景は、滋賀の宝物です。感動するくらい本当に美しいです。
私(校長)の願いは、子どもたちに「びわ湖」や「ふるさと滋賀」を素敵だと思ってほしいこと。びわ湖や滋賀をめいっぱい好きになってほしいこと。そして、誇りに思ってほしいことです。
日本一大きな湖「びわ湖」・・・周りの山々からは460本ほどの川が琵琶湖に流れ込んでいます。びわ湖の水は、私たちの大切な命の水となっています。そして、瀬田川から宇治川へ、最後は淀川となって、大阪湾に流れ出ていきます。びわ湖の水は私たち滋賀県だけでなく、京都や大阪の人たちの大切な水、近畿1,300万人の「水がめ」となっています。そんなすばらしいびわ湖がある滋賀県に住んでいることは、私たちの自慢であり誇りです。それと同時に、我々滋賀に住む者には、この母なるびわ湖の美しさを未来永劫守っていく責任があります。大切なびわ湖を「預かっている」という認識を持つことが大切だと思います。大げさに言えば、その「誇り」と「責任」を感じるために、「うみのこ」フローティングスクールはあると思っています。
2日目は、木枯らしを思わせる「北西からの強い風」が吹きました。予定の航路を行くと強風を真横から受けることになり、船が大きく揺れるため、航路を変更し、長浜から一旦マキノ方向に北上し、湖西の岸を舐めるように南下し、途中白髭神社を展望し、琵琶湖大橋港へと船を進めていただきました。船長さんはじめ、船員さんやフローティング所員の子どもたちに対する「安心・安全」の意識と心遣いには感謝しかありません。
最後に、2日目の最高気温は12~13℃にしか上がらず、大変寒い日になりましたが、朝の空気の冷え込みと温かな湖面(湖水)との大きな「差」のおかげで、びわ湖の湖面に蜃気楼を見ることができました。長いフローティング経験の中で初めて見る「自然の奇跡」でした。最後に、蜃気楼の写真を載せておきます。びわ湖の水面から少し浮くような形で、どこかの街並み?木立の風景が見えています。