今年度も滋賀県職業能力開発協会さんのご協力を得て、「ものづくりマイスター(プロ職人)」の指導のもと、6年生が「ものづくり職業体験」をさせてもらいました。滋賀県職業能力開発協会とは、いろんな職業の技能検定(国家資格)を行うところですが、「ものづくりの魅力」を伝え広め、「ものづくり」に関係する職業の後継者育成にも力を尽くされています。
今回、本校の6年生が体験させてもらった職業(ものづくり)は、「建築大工」、「造園」、「建築建具」、「板金」、「和裁・着付」、全部で5つです。子どもたちは、自分の興味に合わせて、いずれか一つの職業(ものづくり)をじっくりと体験させてもらいました。
「建築大工」は、「タブレットスタンド」を作るために、木材の①寸法取り②のこぎりを使っての切り出し③釘打ち④やすり掛けのすべての工程を自分でやりました。直角が取れる「曲尺(差金)」という専用のものさしを使って、ミリ単位で切る位置(線)や釘を打つ位置の寸歩取りをしました。鋸を使うと当然おがくずも出ますが、その辺のこともちゃんとわかって、せっせと箒ではく子どもたちの姿に感心しました。
「造園」では、立派な孟宗竹を用意してくださり、その竹を器にして、その中に「ミニ庭園」を造りました。「仕事」で一番大事なのは「安全」。職員の皆さんは、服装も手袋もきちんとされています。作業している間に暑くなってきて、Tシャツ姿になっている子がいましたが、「仕事の根本」が分かっていません。鉈(なた)を使って竹を縦に割りましたが、「鉈は危険だから使わさない。」ではなく、「鉈が危ないことをちゃんと分かって、安全に使う。」ことを大切に、子どもたちにきちんと指導してくださいました。子どもたちは、お好みの「庭石」や「植栽(花)」、「苔」などを選んで、自分なりに「ミニ庭園」をレイアウトしました。どの子もそれぞれに「趣」のあるミニ庭園が仕上がりました。家の玄関に置くととても様になりそうでした。
次は「板金」です。下絵に書いた「文字」の周りを叩いて凹ませることで、文字を浮き上がらせます。背景の余白は、「点描」のように小さなくぼみをすき間なくつけて、文字が強調されるように仕上げます。最後に銅板を磨き、額に入れれば完成です。丁寧さと根気のいる作業ですから、それぞれの子どもたちの性格がもろに現れます。銅板に凹みをつけるのはかなり力作業なので、しばらくやっていると疲れてきます。そこで作業が雑になる子と、あくまで細かく、均一に銅板を打ち続ける子に分かれてきます。作品をよ~く見ると、仕上がりの差が分かりますが、ぱっと見はどの作品もきれいでかっこいいので子どもたちは大喜びでした。
「建築建具」では、木材を格子状に組み立てて、紙を張り「ミニ障子」を作ります。木材を組み合わせるための溝はすでに職人さんが彫っておいてくださいます。木材の溝と溝を合わせて組み立てるのですが、これがびっくりするほど正確で、ピタッと少しの隙間も段差もなく、組みあがります。あまりにもピッタリはまるので、ある子が思わず、「わあ~、気持ちいい‼」と声を漏らしました。きっとこの「気持ちよさ」が建具仕事の魅力(醍醐味)だと気づいた瞬間でした。この「ミニ障子」は、単品でも飾りになりますし、みんなの作品を合わせてひとつの大きな「障子」の作品にもなってとても素敵でした。
最後は「和裁・着付」です。
きれいな和風柄の生地を使って、ポケットティッシュ入れを手縫いしました。着物を着た師匠(先生)が、丁寧に上品に教えてくださるので、会場の空気そのものが落ち着いた和室のような雰囲気を醸し出します。後半は着付け教室となり、全員が新品の浴衣を着せてもらいました。
子どもたちのために、これだけの体験とものづくりの材料を用意してくださる「ものづくりマイスター」の先生方には、本当に感謝しかありません。「子どもたちに『ものづくり』のよさを知ってもらいたい。」・・・その一心で、ここまで至れり尽くせりでやってくださることに、心からお礼申しあげます。
本来「ものづくり(職人)」の仕事の基本は、「習うより慣れろ」。師匠(先生)は何も教えてくれないのが普通です。「自分で師匠の仕事を見て、まねて、まねて、まねて・・・そして自分のものにする。」・・・それが仕事の基本です。そしてそれは、「学ぶ」姿勢の基本でもあります。「学ぶ」という言葉は「まねぶ」=「まねる」が語源です。親切丁寧に教えてもらって当たり前、できなかったら手伝ってもらうのが当たり前・・・そんな「学び方」に子どもたちが慣れてしまっているとすれば、それは本当の「生きる力」にはなりえないかもしれません。「学ぶ意味」や「学び方」のあり方を、子どもたちと一緒に考えながら「学校での学び」を充実させていきたいと思います。