先週は、フローティングスクールや出張等、学校を留守にする日が多かったので、3日ほど校長ブログが途絶えてしまいました。今日からまた毎日更新を目指したいと思いますので、よろしくお願いします。「校長の図工作品解説シリーズ」も3回目。今回は高学年の平面作品の紹介です。
まずは、5年生の作品です。
「銀河鉄道の夜」の世界を描いた作品です。主役となる機関車をしっかりと描き、背景は幻想的、ファンタジックな宇宙を表現しています。背景の描くのに「スパッタリング」と言われる、目の細かい金網を歯ブラシ等で扱いて、絵の具を飛沫状に飛ばす技法を使ったり、「タンポ」を使って機関車の煙や輝きを表現したりしています。
5年生ですから機関車の重厚感のあるメカニックな部分はしっかりと描きたいところです。特に「車輪の部分」もしっかりと丁寧に描くことで迫力や躍動感が出ています。どうしても「寒色系」の色ばかりになりがちなので、そこにどう「暖色系」・・・黄、橙、赤、茶等を入れていくかが大事なポイントで、「機関車のヘッドライト」や「窓」に暖かい色を入れたり、機関車の一部分に暖色のラインを入れたりするとうんと絵が明るく、生き生きとしてきます。また、背景の色数が少ないので、「スパッタリング」の技法で、ピンクや紫色の「天の川」的なものを入れたり、綿棒を「タンポ」にして、橙や黄緑の「星雲」的なものを入れたりすると、銀河(宇宙)の世界がより幻想的でファンタジックなものになるような気がします。
最後は6年生の作品です。6年生はタブレットPCを持ち帰り、自分のお気に入りの風景を撮影して、その写真を見ながら風景画を完成させました。
私(校長)が若い時は、図工の授業時間数がもう少し多くて、一年に一回は必ず「写生会」をして、じっくりと時間をかけて風景などを描いていたのですが、「総合」や「外国語」などの新しい教科も入ってきた今、図工の時間数は減ってしまい、時間をかけて「写生」するような学習はしにくくなりました。逆に、ICTの活用が進み、理科の観察記録や、図工の描きたい「被写体」探したり、撮ったりする場面ではタブレットが活躍するようになりました。
さて、6年生の作品ですが、どれも大変丁寧に描かれていて、また水彩絵の具のよさである「透明感」のある着色ができているので、とても美しい作品に仕上がっています。
こういう作品づくりをする時に、一番気をつけなければならないのは、「自分の好きな風景」を写真に撮る時です。
「何が絵の主役なのか。」=「自分は何に心を惹かれたのか」、「何を中心に描きたいのか」が明確になってないと、「なんとなくきれいだけど、どこを見ていいかわからない」作品になってしまいます。一番分かりやすい構図の取り方は、「一番描きたいもの=近景(大きく)と、中景、遠景(小さく)」を取り込むような構図にすると、主役がはっきりしますし、画面に奥行きも出ます。「あれもこれも写真に取り込みたい。」と欲張ると結果的に、主役のぼけた平面的な寂しい絵になってしまいがちです。
「永源寺」を描いた作品は、永源寺の「静寂さ」を表そうとする作者の意図がはっきりとわかるので、これといった主役はないのに、心が惹きつけられる作品になりました。淡くて陰影のある着色が秀逸です。次の「神社」の作品は、神社の荘厳な雰囲気に、参拝する家族を取り込むことでとても温かな雰囲気を醸し出しています。もう一つの「神社」の作品は、神社の「歴史と美しさを感じる細工彫り」の部分に心惹かれたことがよくわかります。描きたいもの(主役)が明確になった作品だと思います。
高学年になると、子どもたちも「絵のうまさ」=写実性に関心が行きがちになりますが、「絵の主役」が引き立っている作品や「描きたい思い(気持ち)」が伝わってくるような作品がやっぱりいいなあと思います。
保護者の皆様、学習参観日に子どもたちの力作をじっくりと見てあげてください。