5年生の道徳の授業を見させてもらいました。教材は「漫画家 手塚治虫」、テーマは【個性の伸長】です。「人それぞれ個性は大切!」という5年生ならだれもが分かっている道徳的価値、その理解の上で、授業では「個性ってなんだ?個性はなぜ大切なんだ?」ということを、自分の心としながら深く考えます。
教材のあらすじを簡単にまとめますと…、
『マンガ家の手塚治虫さんは子どもの頃からマンガが好きでした。しかし、体が小さく、運動も苦手でした。マンガを描いていることに劣等感もありました。
しかし、小学5年生の時に、担任の乾先生が「君はおおいに自分のよさを伸ばしなさい。」と言われて、自信がつきました。
医者になるために医大で学んでいる時も、マンガ家になろうか悩んでいた手塚さんは、お母さんに相談します。お母さんは「マンガが好きならマンガ家になりなさい。」と言ってくれ、その言葉でまんが家になることを決心します。
40年以上もマンガ家として活躍した手塚さん。めげそうになることもありましたが、そのたびに自分を奮い立たせ、マンガを書き続けました。真剣なメッセージを込めて描き上げたマンガは、世界中の人に読まれ、愛されています。』
手塚さんは、マンガを描くのが本当に好きで、劣等感を感じても、「マンガを好き」という気持ちがずっと消えませんでした。このぐらい、マンガに対する気持ちが高まっているから、乾先生の「自分のよさを伸ばしなさい」という言葉が心に響き、お母さんの「好きならマンガ家になりなさい。」という言葉に背中を押されたのでしょう。
つまり、個性を伸ばすには、『自分の長所を認めてくれる大人との出会いが必要』なのではなく、『何があっても続けたいぐらい好きなことが、今の自分にあることに気付く』ことだと私(校長)は考えました。子どもたちは、どんなふうに考えたでしょう?
ここまでは、道徳の授業としての話ですが…、
それとは別に、この授業に私(校長)は、担任のY先生の強い思いを感じていました。Y先生は子どもたちに、「自分の考えや思いをしっかり持って、友達と伝え合ったり、話し合ったりできる力をつけたい!」と強く思っているんだなと感じました。
「教えられること」に慣れ、「正解を出すこと」だけにとらわれている子どもたちは、「〇〇についてあなたはどう思う?」と聞かれた時、なかなか明確な考えや思いが持てないことが多いと感じています。また「あなたの考え(思い)を伝えましょう。」という投げかけにも、自信がなかったり、恥ずかしかったり、「自分の考えは変かも…」と卑下したりして、なかなかうまく伝えられません。そんな感じですから「話し合いましょう。」と言われても、それぞれの考え(思い)を順番に言うのが関の山で、他人(ひと)の考え(思い)を聞いて、さらに自分がどう思うかなどを伝え合い、考えを深めていく本当の意味での「話し合い」にはなかなか高まりません。
これは本校の子どもたちに限ったことではなく、どこの学校でも言えることだと思っています。(外国の子どもたちは、「あなたはどう思う?」に確実に「私はこう思う。」とはっきり言える気がします。)
Y先生は、どの学習においても「自分の考えをもつ→しっかり表現する→伝え合って考えを高める」力を、じっくり手間をかけて育てていこうとしているんだなと感じました。授業の中でとても「伝え合い」を大事にしていました。
こんな学習を日々積み上げながら、また今日学習した「自分の個性」に自信を高めながら、「伝え合う力」をつけていってほしいなと思います。