今、2年生は算数で、竹製の30cmものさしを使って学習しています。ひょっとしたら、
「令和の時代に、竹製って…時代錯誤なのでは…。」
「定規なら、100円均一でも売ってるし、目盛りに数字も書いていて、そっちのほうが使いやすいのでは…?」
「だいたい30cmって、長すぎて筆箱にも入らない…。」
などなど、思っている人もいるのでは…と思います。
そもそも「ものさし」と「定規」は別物で、「ものさし」は「長さを測るもの」であって、「定規」は「線を引くためのもの」と用途が違います。「ものさし」はものの長さを測るためものだから端から目盛りがついています。(端が0です。)
一方、「定規」は決まった長さの直線を引きやすくするために、端(0)の横に少し余白を設けています。今の2年生の学習は「長さを測る」ですから、「ものさし」の方が適しています。
次に、なぜ「竹製なのか?」については、「竹」は温度や湿度の変化による伸び縮みがほとんどなく、いつでも正確で、長持ちするという特長を持っています。おまけに、竹製は、プラスチックや金属性のものに比べて、素材が柔らかく安全だということも小学校で使う大きな理由だと思います。
さらに、 「なぜ、30cmなのか?」については、本当のところはわかりませんが、おそらく子どもたちが扱うものの多くが30cmものさしであれば、測ることができるから…と思います。何よりもこの30cmものさしのおかげで、今も昔も、老若男女…すべての人が「30cmってこれくらい」ってイメージできることこそが、脈々と続く「30cmものさし」の功名なのではないでしょうか。
一人1台タブレット端末時代になってから、子どもたちの学習は「個別最適化」しやすくなりました。自分の必要に応じて、練習問題にチャレンジしたり、もう一度復習したり…、問題に答えると、すぐに正誤についてレスポンスがあるので、テンポよく学習を進めることができます。
実に効率よく、便利に学習できる時代になりました。しかし、「便利」ばかりに気を取られていると、また「問題に正解すること」ばかりに気を取られていると、「学び」の本質である「生きる力」に結びつくという、一番大事なことを忘れそうになってしまいます。
ずいぶん前の話ですが、全国学力・学習状況調査の算数の問題に「はがきの面積は何cm?」という超シンプルな問題が出たんですが、この問題の正解率がとても低くて、愕然としたことをよく覚えています。実は、その問題には、はがきの縦横の長さも書いてなくて、ただ正しい答えを①15㎠②150㎠③1500㎠④15000㎠の中から選ぶだけという問題だったのですが…。当然答えは150㎠なのですが、「当然」と言えるには、はがきのサイズがだいたい10cm×15cmだと分かることと、長方形の面積が縦×横だと分かっていることの二つが必要になります。子どもたちはおそらく「はがきのサイズ」が実感として浮かばなかったのだと思います。いわゆる「量感」…(経験や身体尺によって、おおよその長さや重さなどが分かる感覚)が育っていないということなのです。
今日、子どもたちのノートを覗くと、「予想した長さ」と「実際測った長さ」の両方を書くようになっていて、しっかりと「量感」をもちながら測ったり考えたりするようになっていました。とても大事なことだと思いました。
「竹のものさし」の目盛りには数字は入っていません。それを「不便ととらえるか」、それとも「応用がきく」、「臨機応変に目盛りを読む力がつく」と考えるか…「生きる力」を考えるとき、答えは明らかです。
私(校長)は娘にもらった「素数定規」というものを、もう10年以上使っています。素数(2,3,5,7,11,13,17)しか目盛りがないので超不便ですが、例えば「4cmの線を引く」ときは、「7と11の間」を使って線を引けます。めんどうくさいですが、どうしたら〇cmの線が引けるのか、考えるのがちょっと楽しいです。