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2024/05/29

「傘修理に想う~「壊す」ことが許された時代~

Tweet ThisSend to Facebook | by 校長

今年は風の強い日が多くて、子どもたちの傘が壊れることがよくあります。昨日も朝登校してきたYさんが、「校長先生、傘がぶっ壊れた~!どうしよう?」とズタボロに壊れた傘を持ってきました。昨年の「フェンス100枚修繕」の影響か、子どもたちは何か壊れると、私(校長)に相談にくる子が増えました。




どうでしょう?なかなかの壊れ具合です。Yさんに「何をしたら、こんなバラバラになるの?」と尋ねると、「さっぱりわからん。なんか突然、バラバラに壊れたね。」という答え。「校長先生、こんなになったら、もう直らへんよね。壊れた傘、どうしておいたらいい?」とあきらめて聞くYさんに、「とりあえず昇降口の隅にでも置いておいて。」とだけ言いました。

集団登校に間に合わず、遅れてくる子もいるので、始業時刻までは校門で子どもたちを待つようにしているのですが…、その間考えました。「なんか突然、バラバラに壊れたね…」というYさんの言葉が引っ掛かります。「一瞬で、全体がバラバラになるということは…全体を一か所で『束ねていた』何かが壊れてぶっとんだということか?…だったら逆に、バラバラになったものをもう一度一か所に束ねられたら、なんとか元に戻る…?」

 

なんかとても懐かしい感覚でした。子どもの頃は、毎日そんなことばかり考えていた気がします。お金も物もあまりない時代でしたから、遊びの基本は「遊ぶものを作る」か「仲間を集めて遊ぶ」のどちらかでした。特に私が好きだったのが「ものづくり」です。ゴミ捨て場に捨ててある粗大ごみ(電気器具とかラジカセとか、自転車とか…)を拾っては、片っ端から「壊し」ました。「壊す」というより「分解した」と言う方が正しいかな。分解しながら「なるほど、ここがここにつながってて…、このモーターで回るのか…。」などと、しくみやしかけについて考えていました。「壊す」と必ずまた「作り(創り)」たくなります。まだ使えそうな部品ばかりを組み合わせて、1台自転車を作り上げたこともありました。昔は、「しくみやしかけ」が単純だったんですね…。たいていのものは「壊せば(分解すれば)」しくみが分かって、自分で再構築(修理したり、作りかえたり)できました。そんなことを「遊び」にしているうちに、「知恵」と「甲斐性」がつき、歳を取った今でも、壊れた傘を見ると、「なんとか直るんちがうかな…」と思う自分がいます。

そんな不便だけど悠長な時代に育ったからこそ身についたことはたくさんあるなと思います。「壊す(分解する)」ことが許された時代だからこそ、「モノを作る」ことが前提だった時代だったからこそ、たくさん学びがあったと改めて思いました。身の回りに「完成品」しかない今の時代、「壊す(分解する)」ことが許されない…というか「分解」したところで難しすぎて何もわからない今の時代に生きる子どもたちは、「遊び」から何を学ぶのだろう…。〇-チューブ動画を見ると、「〇〇をぶっ壊してみた!」みたいな本当にくだらない(というか腹立たしい)動画もあって、こんなものを見て面白いと思っている子がいるとしたら本当に悲しいことだと思います。「壊す(分解)」することが「学び」につながるのではなく、憂さ晴らしのためや冗談でものを「壊す(破壊する)」…。「学び」とは真逆の「自分の心を壊す」ことにしかならないのに…。

 

壊れた傘を校長室に持って入り、じっとじっと観察、ひたすら観察…。「なんとなくわかってきた…ここに骨を全部集めて束ねればいいのかも…。」、「もともと束ねていただろう部品(多分プラスチックのリング?)はもうないから、何で代用する?針金じゃ硬くて仕事しづらい…真鍮の針金なら柔らかくて丈夫か?」、「でも傘のばねのテンションがきつくて、骨を決まったところに固定しにくいから、何か万力(まんりき)かクランプで固定してからするしかないかな…。」いろいろ試しながらも、昨日は作戦を立てるだけで終わりました。

そして今日、家からいろんな道具や材料をもってきて、作業を再開。なんとか全部の傘の骨を一か所に固定して、不細工ながら元の形に戻すことができました。



修理した傘をYさんに持っていくと、「えーっ、直ってる⁉」とびっくりしながら喜んでくれました。周りの子どもたちも、「あんなにひどく壊れていた傘が直るん?」、「校長先生、すごすぎ…!」とほめてくれました。

 

子どもたちには「ものを大切に扱ってほしい」と切に願います。ものを作った人にも、ものを買ってくれた人にも、そして時間をかけてものを直した人にも、すべて「思い」があるのですから…。そんな「思い」を大切にできる子に育ってほしいと思います。




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