ずいぶん以前の毎日新聞「余録」に、次のようなことが書かれ
てた。
大仏次郎さんが英国の田舎を旅行した。そこで見つけたのは空
き地の素晴らしさだった。「鞍馬天狗」「赤穂浪士」などの作者で、
「パリ燃ゆ」「天皇の世紀」などノンフィクション、史伝を書いた
人である。
中世の城の廃虚があった。入り口に守衛の小屋があって、入場
料を払うと、勝手に見る仕組み。番人はいない。それもそのはず、
城が崩れて、うずたかく残っているだけで、ほかには何もない。
一部の璧は立っていて、窓や銃眼があいている。
そこまで登ると、イングランドの田園が開け、遠い地平まで見
通せる。廃虚を片づけようともせず、空き地のままにしている。
日本のようにコンクリートで新しい城を造って、内部を歴史博物
館にしたりしない。いまにも国王や騎士の幻影が出てきそうだ。
日本は空き地の上にせっせと建物を建てている。「歴史は息の
できないアスファルトの舗装の下に埋没されてしまった」と大仏
さんは嘆いている。英国はわざと地面が方々にあけてある。「日本
ではあき地の面白さを、それを思想で埋めてよろこぶ楽しみを、
人がもう感じなくなったようである」と、大仏さんの随筆「あき
地の楽しさ」を読み返して、あき地教育を思った。
「自ら課題を見付け、自ら学び、自ら考え、主体的に判断する」
資質、能力を育てるのが目的と指導要領案にある。この教育の中
のあき地、息苦しい学校の中で、深々と深呼吸できる場所になれ
ばいいのだが。子どもたちにあき地の面白さを教えよう。
親の期待を背負い忙しい毎日を送る子どもたち。忙しい時ほど、
空き地が必要ですね。子どもたちに空き地がなくても、せめて教
師や親の心にゆとりをもって、子どもたちに臨みたいものです。